『バイオパンク』遺伝子をキッチンで科学する日は遠くない?【書籍紹介】


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『バイオパンク』遺伝子をキッチンで科学する日は遠くない?【書籍紹介】

 

バイオパンク

遺伝子やDNAといった存在は、まだ発見されたばかりの最新科学のような気がします。バイオテクノロジーという言葉も生活とはあまり関わりがなく、なんとなく私たちの生活とは縁が遠い存在のような感じを受けるかもしれません。。

ところが遺伝子工学によりどんどん生命の仕組みは明らかになっており、それは確実に生活の中に入り込んでいます。それどころか、科学者が実験室の中で行っている実験すらも、私たちができるようになる日が近いかもしれません。『バイオパンク DIY科学者たちのDNAハック!』の著者マーカス・ウォールセンは、遺伝子の実験をガレージやキッチンでもできるというのです。この本は生命科学に興味がある人はもちろんのこと、研究者でないけど科学したいという人にはぜひオススメの本です。

 

キーワードはDNAの「オープンソース化」

大多数の一般の人にとって研究は生活とは無縁のもの。ましてや遺伝子実験なんてものは、セキュリティーが厳しく一般人に入ることのできない研究室のずっと奥の方でやっているような、まさに閉ざされたものだと感じます。もしあなたが生物工学(バイオテクノロジー)を専攻していたとしても、実際に研究者になれるのはごくごくわずか。「科学する」こと自体が縁の遠いものだと感じます。

ところが今回紹介する『バイオパンク DIY科学者たちのDNAハック!』では、研究室に属さない人を例に、ガレージやキッチンでDNAの遺伝子実験(例えば遺伝子組み換え)の例が多数紹介されています。

なぜそのようなことができるのか。著者のウォールセンは次のように述べています。

バイオテクノロジーの本質は、遺伝子を混ぜたり配列を組み換えたりして、自然界に現存しないものをつくり出すことだ。

(第2章 バイオハッカーの源流)

歴史上、私たちの祖先は、遺伝子を組み換えていることなど知る由もなく、しかし現実にその行為を行ってきました。しかもその多くは科学者ではありませんでした。農作物の品種改良は農家によって長年行われてきていますし、遺伝の法則を発見したメンデルも本業は修道士です。バイオテクノロジー以外で言うなら、アインシュタインだって最初は家庭教師のアルバイトだったり特許庁の職員だったりしたわけですから。

しかし、どうして研究者でない人が遺伝子を操作できるようになるのか。ウォールセン曰く、DNAの塩基配列がオープンソース化され、シェアリング(分かち合い)とコラボレーション(協力)によって可能となるというのです。その流れは3Dプリンタでデータから様々なものを作り出そうとしている人たちを連想させます。

 

科学が市民の手に戻ってくる日は近い?

DNAの直接操作による遺伝子組み換えは四〇年近く前に発明されたが、遺伝子工学全般のイメージは、いまだに未来のものといったところだ。

(第5章 途上国のためのバイオテクノロジー)

ウォールセンは「バイオハッカー」が活躍するというのです。「ハッカー」というと、コンピュータに侵入する悪者、というイメージが良いかもしれませんが、ウォールセンは「自力で解決しようとするアプローチ」という意味で使っています。例えば「ライフハッカー(lifehacker)」というサイトは日本でも人気があります。バイオハッカーとは、自宅で遺伝子工学の実験をやろうとする人のことなのです。

しかし、この本はそのような自宅での遺伝子工学の実験をオススメしている訳ではありません。もし、隣の家に住むご近所さんがこっそり家で遺伝子組み換え生物を作っていたら、びっくりするでしょう? 良いところばかりでなく、さまざまな問題点も多く指摘しています。例えば、自宅にあったシャーレ(細菌を培養するガラスの器)を見てFBIからテロリストとして拘束された人の例も挙げられています。

では、そんなリスクまで冒して、なぜ科学者でない一般人が実験するのか。その思いはウォールセンによってこう綴られています。

科学は、ともすれば遅い。科学は、ともすれば退屈だ。−心躍る偉大な発明を生み出すにもかかわらず、科学界の礼節は、一種の沈黙を命じる。

(中略)

しかし、その同じプロセスが、一般市民に科学を閉ざすことになる。ラボの壁の中で進行していることは、市民とは無関係なことになる。こうして、こんにちの基礎科学はかつてないほど秘儀的になった。

(ライフ/サイエンス)

今まさに時代はその壁を取り除こうとしています。また、その壁を簡単に取り除くことが難しいのも事実。テクノロジーの進歩とオープンソース化によって、科学が今まさに市民の手に戻ってこようとしているのかもしれません。

 

あとがき

『バイオパンク』という本をここまで紹介してきましたが、そもそも「パンクって何だ?」って皆さんはきっと思ったでしょう。実際読んだ私も最後まで分かりませんでした。本書では最後にパンクの意味が書かれていますが、もし最初にそれを見ても、意味がよく分からないでしょう。最後まで読んで初めてたどり着く、今までの常識を超えた新しい価値観が見えるに違いありません。

遺伝子に興味がある人だけでなく、科学リテラシーや科学コミュニケーションにもぜひお勧めしたい1冊です。日本ではなく米国で出版された本なので日本とは必ずしも合致しない点もあるかもしれません。けれども、読んで決して損のない1冊でしょう。

 

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