必見!理科の実験で起こりやすい硫化水素の事故を防ぐ方法。


スポンサードリンク




必見!理科の実験で起こりやすい硫化水素の事故を防ぐ方法。硫化水素の発生
2013年度上半期だけでも少なくとも報道されただけで2件の「学校の授業での硫化水素の事故」がありました。

硫化水素実験で生徒6人搬送 仙台(2013.05.30)

30日午後0時10分ごろ、仙台市太白区の宮城県立聴覚支援学校から「硫化水素を発生させる理科の実験後、生徒がのどの痛みなどを訴えている」と119番があった。生徒6人が救急搬送されたが軽症で、間もなく全員が自宅や寄宿舎に戻った。

仙台南署や同校などによると、搬送されたのは、中学部2年の男子生徒2人と女子生徒4人。

6人は午前中にあった理科の授業で、硫化鉄に塩酸をかけて硫化水素を発生させる実験をしていたが、授業後に5人がのどや目の痛み、寒気を訴え、残る1人とともに病院で診察を受けたという。

(出典:産経新聞)

硫化水素:中学の実験で発生、4人入院 京都(2013.07.12)

12日正午ごろ、京都市伏見区桃山井伊掃部(いいかもん)東町、京都教育大学付属桃山中学校の理科室で実験中、有毒ガスが発生し、2年生の男女15人が気分不良を訴えた。うち男子生徒4人が授業後、市内の病院で治療を受け入院した。いずれも命に別条はないという。

府警伏見署や同校によると、理科の授業で鉄と硫黄の混合物から硫化水素を発生させる実験をしていたという。

(出典:毎日新聞)

双方とも硫化鉄と塩酸の反応によって硫化水素H2Sを生じる反応における事故でした。そして学校で事故が起こるのは大変痛ましいことです。まずは関係した生徒のみなさんと先生方にお見舞い申し上げます。

さてここでは、以下の3点を中心にまとめておきたいと思います。

  1. 硫化水素の毒性について
  2. 実験での留意点
  3. 応急処置と事故対応

理科の授業でなぜ硫化水素の実験を行うのか?

硫化水素の実験による事故は頻繁に起こってしまっているという実情があります。では、そもそもなぜ硫化水素の実験を行うのでしょうか?

新聞記事等では「硫化水素を発生させる実験」と表記される事が多いですが、実際には硫化水素を発生させる事がこの実験の目的ではありません。メインは以下の写真のように、鉄と硫黄を混ぜて加熱し、化学反応によって硫化鉄ができることを確かめる実験です。

鉄と硫黄の化合
そして硫化水素の発生は、硫化鉄が鉄や硫黄とは異なる性質を持つ物質である事を確認するために行います。

塩酸HClに鉄Feを入れると、水素H2が発生します(水素は臭いのない気体です)。硫黄を塩酸に入れても何も起こりません。けれど、硫化鉄FeSを塩酸に入れると卵の腐ったような臭いのする気体、硫化水素H2Sが発生します。これにより、化学反応によって別の性質を持つ物質ができたことを確かめることができるのです。

硫化水素の発生
非常に臭いのキツい実験ですので、授業で行えば子ども達に強く記憶に残るでしょう。しかし硫化水素には毒がある事に気をつけなければ、大きな事故を引き起こしてしまうこともあります。

 

硫化水素にはどんな毒性があるのか?

硫化水素H2Sは「可燃性、有毒性、不快臭を有する、無色の気体」です。つまり、目には見えません。硫化水素H2Sを扱う場合は「見えない危険物を扱う」ということを常に意識しておく必要があります。

低い濃度で短時間吸ってしまっても、硫化水素は血液中で酸化され無害です。しかし、一度に大量に吸ってしまったりすると、硫化水素は脳神経に作用し、意識障害がおきたり呼吸麻痺に陥ってしまいます。また、低い濃度でも長時間吸ってしまうと、鼻の粘膜や気管支、目の角膜や網膜の細胞にはたらいて組織を壊してしまいます。報道で「のどや目の痛み」を訴える生徒がいたのもそのためです。

より深い理解したい方は、web上にある詳細な情報や化学用語辞典、物性辞典をごらんになっても良いかと思います。また、硫化水素中毒については、理科の実験による事故だけでなく、故意に発生させた事件もあり、日本薬剤師会などで注意喚起がなされています。

【参照】硫化水素中毒に関する知識 平成19年10月19日 札幌(山本労働衛生相談室(小樽市))

【参照】硫化水素による自殺・事故の発生について (日本薬剤師会)

 

硫化水素は身近な気体!?

また、硫化水素は身近な所では硫黄系の温泉が湧いている所では、必ず旅行者に対して立入禁止などの注意喚起がありますね。それほどH2Sは身近にある危険と言うことができると思います。(温泉場で「うーん。硫黄の臭い〜」って言ってる人には教えてあげましょうね)

箱根温泉の火山ガス(硫化水素)を注意する看板
これは火山の近くで天然の硫化水素が発生しているものです。あまりにも大量に硫化水素が発生している場所では、硫化水素が空気中の酸素と反応して、単体の硫黄Sになって地面にこびりついています。有名なのは箱根温泉ですね。山間を歩いていてもロープウェイからも、岩肌の黄色い硫黄が見られます。

また、一般の人でも薬局で購入できる薬品を反応させてしまうことで発生する物質でもあります。身近にあるといっても、毒性に違いはありませんから十分な注意が必要です。

 

実験ではどんなことに気をつけたらよいのか?

では「毒性のある気体を扱う」実験での、具体的な留意点とはなんでしょうか。中毒の起こり方には個人差がありますが、基本は「なるべく吸わないようにする」ことです。

私は硫化水素H2Sに限らず「毒性のある気体を扱う場合は必ずドラフト内で」ということを、強く推奨します。しかし、なかなか中学校でドラフトを備えている学校というのも少ないと思いますので、少なくとも風通しの良い実験環境の準備を心がけていただきたいと思っています。

ドラフトがない場合は硫化鉄を塩酸に入れる前に、換気扇・窓は全開にし、反応後の片付けでは速やかに回収し、塩酸は別の容器に一時的に移し、試験管もベランダ等外に出しましょう。つまり、発生してしまう硫化水素はできるだけすべて部屋の外に排出する。そして文字通り「臭いにおいは元から断つ」が鉄則になります。

また事前学習では、硫化水素H2Sが不快臭と有毒性を持つことを強調して、異臭を感じたらすぐに教師に知らせることを生徒と確認しておきましょう。もし異臭が発生したら実験を中止し、窓を開けるなどして換気をしてください。

 

万が一事故が起こってしまったら・・・

万が一その場にいた人が中毒になってしまった場合の初期対応は、
  • 吸い込んでしまった場合は、”速やかに新鮮な空気の場所に移し、安静、保温に努め、急いで医師の手当を受ける”。
  • 皮膚に触れてしまったら、”被曝部を多量の清浄な水で洗浄する”。
というのが本人への対応のようです。

さらに中毒になっていない生徒はその部屋から退避させる。そして学校の危機管理マニュアルを遂行することが必須です。
具体的には、実験指導者は管理職と養護教諭への連絡、管理職が外部機関への支援要請、保健室が中毒になった生徒への対応の引き継ぎあたりになるかと思いますが、もちろん学校によって細部は異なっていますので、実験前に危機管理マニュアルを確認しましょう。

さらに細かく知りたい方は以下を参照されると良いでしょう。

【参照】硫化水素 (可燃性・毒性ガス 無色・特異臭(腐卵臭))(富山県高圧ガス安全協会)

 

おわりに

今回は硫化水素H2Sの事例をとおして、硫化水素の扱い方をについて取り上げました。

特に化学反応を伴う実験は、その反応の派手さが実験学習の面白みに大きく寄与しているのですが、反面、光や熱、化学的性質などをきちんと指導者が把握していないと、なんでもないような実験でも事故が起こらないとは限りません。予備実験は教師が「教える立場として学ぶ」貴重な機会と捉えることもできます。ぜひ手間を惜しまないでほしいと思っています。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

参考元

 

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
このコンテンツは クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 継承 2.1 日本 ライセンスの下に提供されています。


スポンサードリンク


※Facebookページ応援よろしくお願いします!

Print Friendly, PDF & Email

この記事を書いた人

あるごん
あるごん特別支援学校教員
現在は特別支援学校に勤務しています。
とくに化学の分野を中心に、面白いものを伝えることを
心がけてきました。
初めて記事に触れる方にも、もっと知りたいと思っている方にも
喜んでいただける記事を目指します。
■略歴
1996 宮城教育大学教育学部 卒業
中学校教員、高校教員(物理・化学・地学・理科総合)を経て現職。

1 Comment

  • 保護者 より:

    娘の中学でも 理科の硫黄の実験の影響で、一人 倒れ、救急車で搬送されましたが、学校は 認めず ことが なかったかの様に 流されました。
    今の 娘の中学は 校長はじめ おかしなこと だらけです、、、。

コメントを残す